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神戸地方裁判所 昭和45年(む)760号 決定

主文

原裁判中、勾留場所を兵庫警察署附属代用監獄と指定した部分を取り消す。

被疑者に対する勾留場所を神戸拘置所と指定する。

理由

一、本件準抗告申立の趣旨並びに理由は、要するに原裁判中、勾留場所を兵庫警察署附属代用監獄とした部分は失当であるから、勾留場所を神戸少年鑑別所又は神戸拘置所に変更する旨の裁判を求めるというにある。

二、よって案ずるに、本件事案の内容は、被疑者が他の者と共謀して昭和四五年九月二四日午後一〇時ごろ、兵庫警察署福原巡査派出所前歩道上において、兵庫警察署保安課勤務兵庫県巡査石原克己(当時二九年)をくり小刀で腹部を突剌し殺害したというにあるが、一件記録によれば、被疑者は山口組系松本(一)組内柴田組の輩下で右犯行当時既に一九才に達しており、あと約五ヶ月で成年になることが認められるのであって、これに右のような事案の重大性、特異性をあわせ考えると、被疑者の勾留場所を神戸少年鑑別所にすることは相当でないというべきである。

そこで勾留場所を神戸拘置所に指定すべきかどうかについて判断するに、一件記録によれば、弁護人主張のように、被疑者が兵庫警察署に逮捕されて以来警察官から暴行を受けている等の事実は認めがたいが、原裁判が指定した勾留場所は当時被害者が勤務していた兵庫警察署の附属代用監獄であるから、同署で取調を受ける被疑者としては、自己の処遇等について不利な取扱いをされるのではないかという危惧の念を抱くであろうことは推測するにかたくない。されば同署としても被疑者の取扱いについて特に慎重を期しているであろうことは、これまた容易に推察できるところであるが、それでもなお被疑者に対し、殊更不利な取扱いをしているのではないかという誤解ないし疑惑、憶測をうけることは避けがたいものがあると考えられる。そうだとすれば、被疑者の勾留場所を神戸拘置所としても、捜査に多大の支障をきたすとは一件記録上認めがたい本件にあっては、前記のような誤解ないし疑惑等をうけることを避けるために、むしろ勾留場所を神戸拘置所に指定するのが相当であって、この限度において本件準抗告は理由がある。

三、よって、刑事訴訟法四三二条、四二六条二項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 矢島好信 裁判官 横山武男 小野貞夫)

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